第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭のSNS部門「NEW CHITOSE AIRPORT Social Media Animation Award」
において、141の応募作品のなかから、審査員による厳正な審査を行い、各賞を決定しました。たくさんの皆様からのご応募をありがとうございました!グランプリを受賞された応募者の方は、今年の映画祭へご招待します。
(審査員のプロフィールはこちらをご覧ください ☞ https://site2023.airport-anifes.jp/competition/smaa/)
Entry for #PostOnNEWCHITOSE2023 @airportanifes pic.twitter.com/vJWptVxXG4
— 大橋史|おおはしし (@6HPMPLP6) April 24, 2023
授賞理由
Twitterでtweetする形式で始まった本AWARDは、気がついたらXでpostする形式に変わってしまった。SNSの移ろいにオンタイムで反応していくことになったわけだが、まさにこの日々変化し、タイムラインに流れていく膨大な情報の中でつい手をとめてしまう映像であるかどうかが審査のポイントのひとつとなった。もちろん単純に目を引くだけでなく、作品時間は適切か、なぜループするのか(しないのか)、コンセプトが充実しているか、実験的な姿勢を有しているかなど総合的に判断する姿勢が短編部門の労力との差分として本AWARDが持つ意義であったと思う。この点に関して、審査員全員から高く評価されたのが大橋さんの一連の投稿作品であった。受賞作となった『花と隣人』は、一見するとシンプルだが、視点や遠近によって、花、ガラスの花瓶、花瓶を通してみえる机のラインなどの各モチーフの見え方の変化が非常に繊細に表現されていた。また、遠近の変化をBLOW-UPと捉えると、写真、窓、絵画、解像度などまで含むメタファーとして考えることも可能である点など、繰り返される運動に最もコンセプトがあり、グランプリに相当すると判断した。
審査員 岩崎宏俊
「水桶」#PostOnNEWCHITOSE2023 @airportanifes pic.twitter.com/T9WPLOOWcy
— 長江 春芳 (@N_haruyoshi) July 16, 2023
授賞理由
モノクローム調の世界のなかで静かに水桶の水面が揺らいでいる。水桶と水道の蛇口のリアリティのある描写スタイルに比べると、水面の描写は少しラフにも見えるが、その揺らぎには確かな説得力がある。また、光の反射が水桶にも描かれており、作者の丁寧な観察眼も窺える。個人的に特に評価した点は、鏡のように反射する水面に映る鏡像としての顔が、キャラクタライズされた虚像でもある点だ。水面の揺らぎによってはっきりと像を結ばず、実と虚が静かに宙吊りになり続けている。
本映画祭は、映画祭と冠しているものの、「映画」限らずさまざまなアニメーションの表現や動向をキャッチすべく門扉を開いている。まさに本AWARDに即した作家として、長江さんの今後の活躍に期待したい。
審査員 岩崎宏俊
metamorphosis#PostOnNEWCHITOSE2023@airportanifes pic.twitter.com/ytzzUD0WSQ
— Julia Farkas (@litopterna108) July 25, 2023
授賞理由
原形質性の変化を繰り返すこのアニメーション作品には意識に固定され易い形状の「着地点」を留めたフレームらしきものが存在せず、それが軽妙なサウンドの効果と相まって短いループであるにも関わらず無限の時空間で未知のものと相対するような神秘的な鑑賞感を与えてくれる。 瑞々しい程の張力を伴って表現された鮮やかな色彩のそれは時間の流れを形態に取り入れた新種の生命体のようであり、理由だらけの煩雑な世界から私達を解き放って無為の宇宙へと連れ去る神性を見るようでもある。
ソーシャルタイムラインに現れた瞬間にイーサネットケーブルを引っこ抜いてずっと見ていたくなる、素晴らしく恐ろしいまでにゆるくてかわいい本作の研ぎ澄まされた独創性に心からの審査員特別賞を贈りたい。
審査員 服部グラフィクス
sparkle sprinkles #PostOnNEWCHITOSE2023 @airportanifes pic.twitter.com/0tlN7fzo5F
— Sawako Kabuki (@soramimicake) July 30, 2023
授賞理由
審査員特別賞の選定は、どの作品も甲乙つけがたく、全ての応募作品を何度も繰り返し確認いたしました。その中で、本作品を繰り返し眺めていると、乾いたエネルギー、快感と覚醒と緊張が折り混ざったような、SF作品を見ているかのような感覚に支配されていきます。
いつまでもフレッシュな印象を感じさせてくれることに、魅了されました。
カラッとしたエロスが、ポップに表現されていて笑ってしまいました。
また、小さな人のブーツの色の違いや、背景ブルーの色味の違いなど細部へのこだわり。色数・線数を絞ることで、より大きなインパクトを与える大胆なグラフィクスの提案。どのシーンを切り取ってもクオリティーが高く、審査員特別賞に選ばせていただきました。おめでとうございます!
審査員 Futaba.