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このたび、アーカイブを映画祭公式YouTubeチャンネルに公開しましたので、ぜひご覧ください。プロデューサーまたは共同制作する作家との出会いを求める皆さまには特にご注目いただけますようお願いいたします。
企画書閲覧のお問い合わせを含め、少しでもご興味があるプロジェクトがございましたら、以下までお問い合わせいただければ幸いです。
NEW CHITOSE AIRPORT PITCH AWARD 2023 お問い合わせ:事務局担当 小野
pitch@airport-anifes.jp
NEW CHITOSE AIRPORT PITCH 2023[日本語版]
https://www.youtube.com/watch?v=79SQkCd5FzE
NEW CHITOSE AIRPORT PITCH 2023[英語版]
https://www.youtube.com/watch?v=bTDddONwNP4
参加プロジェクト一覧
(制作者の意向により、『Breath of the City(仮)』は非公開とします。)
私の横たわる内臓
登壇者 :副島しのぶ
日本の民間信仰である胎内潜りと、その霊性的な空洞世界を舞台にした立体アニメーションの映像詩。日本語の「胎内」は子宮を指すだけでなく、仏像内部の空洞をも意味しており、そこはあらゆる生命体の始まりの場所であり、死後の安楽地のような、神秘的でどこか暗い、無限の空白が存在している。そこでは生物と物質の境界線は溶解し、外界と内界は絶えず反転し続ける。本作は劇場及び映像インスタレーションとして発表予定。
KNOCK KNOCK(仮)
登壇者 :Kazune H Urano
アニメーション×現代音楽×劇場公演×バレエ。
メンバー全員が作曲家や演奏家で構成された制作チームで送る、
アニメーションとライブ演奏の劇場体験型総合芸術。
北海道の森の動物たちを中心に童話的な雰囲気で彩られる現代の寓話をモチーフに、アディソンの物語は進んでゆく。
絵本に慣れ親しんだ親子連れ、
インスタレーション含む総合芸術に興味がある層、
バレエファンや音楽芸術に興味がある層が今回のターゲット層である。
連絡先:Kazune H Urano
studio.pelahap@gmail.com
寒山拾得
登壇者 :山田遼志
美術史学者の辻惟雄によって、奇想の系譜と位置づけられている寒山拾得をテーマに、東アジアの禅思想をベースにした作品制作を進めています。二人は普賢菩薩、文殊菩薩の生まれ変わりとされ、脱俗した生活を送り現世をあざ笑います。彼らの奇行をこと細かく描き、その脱俗の境地を探りたいと思っています。
蝶
登壇者 :オウ セイ
短編アニメーションで“自己同一性”の問題を反映し、具象的に表現する。現在、20~30代の若者たちには複雑なストレスで自分自身というものがわからなくなっている人が多いと思うので、自己存在の意味を彷徨っていた「生命体」の物語を通して、未来を迷って“自己同一性”を探し求めいる若者たちにアイデンティティの共感と力を与える。
映像作家・持田寛太が制作した第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭公式トレーラーのメイキング映像が公開されました。
制作段階ごとの7つのパートに分かれたボリュームある内容になっています。ぜひご覧ください!
本編映像は以下からご覧いただけます。
クレイアニメ風の3DCGで表現されたワニや北海道の特産物などのキャラクターたちが、飛行機からシアターに降り立ち映画祭の開催を心待ちにする、ポップでかわいらしいトレーラー映像となっています。
持田寛太 ☞ https://kantamochida.info/
Music: Phasma ☞ http://phasma.jp/
2023年11月2日(木)〜6日(月)までの5日間、新千歳空港を舞台に開催した「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」では、文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業と連携し、過去採択クリエイターとアドバイザーを招いたトークイベントを11月5日、新千歳空港ポルトムホールにて実施しました。
過去に文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業に採択された、土屋萌児さん(『耳なし芳一(仮)』)と矢野ほなみさん(『その牛、えり(仮)』)をお招きし、本事業採択企画である各作品について、当時アドバイザーを担当した森まさあきさん、今年度より同事業のアドバイザーを務めるモンノカヅエさんを交えて、現在制作中の新作アニメーションの制作過程についてお話をお伺いました。
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業とは
文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業は、若手クリエイターの創作活動および発表機会を支援するプログラム。メディア芸術各分野に応じた適切な評価・助言ができる識者をアドバイザーとし、企画内容に応じたアドバイスを通じて、採択されたクリエイターが次のステップへと進む機会となることを目指すものです。
2011年からスタートした本事業は、令和5年度までの採択者も含めてこれまで120組のクリエイターを支援しています。今年度から支援事業としての規模が拡大し、以下2つの枠で、レベルアップサポート、広報協力、クリエイターとの交流、発表サポートなどの発表活動に対する支援を行っています。
- ・創作支援プログラムとして予算上限500万円までの応募枠
(活動歴5年以上、または国内外で受賞歴等のある概ね40代までのクリエイターが対象) - ・発表支援プログラムとして予算上限100万円までの応募枠
(活動歴3年以上の概ね40代までのクリエイターが対象)
・メディア芸術クリエイター育成支援事業
https://creators.j-mediaarts.jp/
支援事業を受けた二人のクリエイターの今に迫る
切り絵作家の土屋萌児(ほうじ)さんは、「耳なし芳一」をモチーフにした10分ほどの短編アニメーション作品を2011年から作り続けています。 令和3年度に採択された土屋さんは、「現時点で3分と数10秒くらいまで出来ています」とその制作進捗について説明し、「ただ切り絵だけではなくて、プロジェクションを用いた表現をこのプログラムで実験させてもらい、取り入れてます。」と、ミュージシャンや音楽マスタリング、声優の採用など、支援を受けて進めたそうです。
さらにご自身でネット上で作品販売も行っていて、作品の制作過程を公開しながら作っていくスタイルをとっています。これについて、原画を購入した矢野さんは、「このクオリティでやっているのかと驚愕しました」と、手元に届いた時に感動したことを伝えてくれました。
土屋さんのプロジェクトの詳細や制作プロセスは以下のページで詳しくご覧いただけます。
・note「アニメーション「耳なし芳一」をつくる」
https://note.com/hojitsuchiya/n/n383b807ac93a
・HOJI TSUCHIYA
https://www.tsuchiyahoji.com/hoichi
一方、令和4年度に採択された矢野ほなみさんは、今回、”牛”をテーマした作品を制作しています。主人公であるホルスタインのえりがジャージー牛である爽に熱烈な恋をして、試練を課しながら狂気的な片思いをしていくストーリー。自身のセクシュアリティに関して深く考えていた学生時代に出会った『ほかに誰がいる』(著:朝倉かすみ、幻冬舎、2008年)を原作・原案とする短編アニメーション作品です。
矢野さんはこの支援について、「書籍や参考資料などの購入させていただき、加えてのびのび生きる牛たちに会いたいと思い、このプログラムで支援いただき取材を重ねるなかで、山地で生きるこの牛たちの物語を立ち上げたいと思った」と言い、今回は360度カメラを導入した絵作りを試しているなど制作状況や、新たな表現方法の試行錯誤について説明しました。
また、今回の支援事業で支援される制作費について「支援されたディレクター(私)自身への報酬はでないので、向こう2年の生活費・家賃を稼ぐ時間が必要で、なかなか専心しきれないもどかしさがあった」と言い、今回の本映画祭に参加しているクリエイターたちともよく「どう生活しているのか?」という話題になると、アニメーション制作と生活の両立の厳しさについて語りました。
矢野さんのプロジェクトの今後はスタジオのページをぜひご覧ください。
・Au Praxinoscope
http://www.praxinoscope.jp/Jp_Studio_003.html
森まさあきさんは、「創作する人たちをどうサポートするかをいつも考えています。とても心配しているし、とても期待しているので、いつでも相談に来て欲しい」と二人を激励し、締め括りました。
成果発表会及び来年度事業応募のお知らせ
令和5年度に本事業で採択された企画の成果発表は、2024年2月17日(土)~2月25日(日)まで、表参道ヒルズスペースオーにて開催する予定です。 文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業は、令和6年度も実施を予定しております。クリエイターのみなさまからのご応募をお待ちしております。
新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会では、2023年11月2日(木)〜6日(月)までの5日間に渡り新千歳空港シアターを中心に「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」を開催しています。
オリジナル作品の制作資金を募るプレゼンテーション企画「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH 2023」が11月5日(日)ポルトムホールにて行われ、アニメーション作家・山田遼志 氏の『寒山拾得』が「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH AWARD」を受賞しました。
NEW CHITOSE AIRPORT PITCH 2023について
今年で3年目のプロジェクトとなるこの取り組みは、日本で活動するアニメーション作家が世界で活躍する機会を後押しし、豊かなアニメーション文化の育成を図るべく、オリジナル作品の制作資金を募るプレゼンテーション企画です。一般観客はもちろん、プロデューサーまたは共同制作する作家や制作会社との出会いの場を提供することを狙いとしています。
映画祭事務局が独自の観点から特に評価する1つのプロジェクトに対して、「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH AWARD」を選出。副賞として制作支援金30万円を授与するほか、映画祭でのトークへの参加や、作品公開の機会を設けるなど、メリットとなるようなサポートをしていきます。
今年度は、King Gnuのミュージックビデオ「PrayerX」やTVアニメ「オッドタクシー」のオープニング映像などで注目を集めるアニメーション作家・山田遼志の新作、ASK?映像祭2021で大賞受賞歴をもつ副島しのぶの新作などをはじめ、バリエーション豊かな意欲作が揃いました。
アワード受賞は、山田遼志 氏の新作『寒山拾得』
本年の「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH AWARD」は、山田遼志『寒山拾得』が受賞しました。
本作のモチーフである寒山拾得は、中国で実在したとされる二人の僧侶のことで、中国をはじめ日本でも水墨画や短編小説などさまざまところで描かれてきました。山田氏は「なぜ今までアニメーションにおいて描かれてこなかったのか、また禅の象徴である寒山拾得図は不条理な世界で生き抜く術を描いているのではないかと考えている。世界は常に不条理で不安定である、だからこそアップデートされたユーモアを見つける必要がある」と惹かれる理由や、現在のプロジェクトの進捗について説明しました。
アワードを発表した本映画祭チーフディレクターの小野朋子は、この度のプレゼンテーションを「企画書段階である程度絞ってきたが今年は企画書のレベルが高かった」と総評し、選考は作品の優劣ではなく本映画祭として一緒に取り組みたいプロジェクトであるかを基準に選考したことを伝えました。
受賞した『寒山拾得』について小野は、「歴史に深い考察を張り巡らせながら、あくまでもユーモアを据えていて、かつ絵が強くてポップ。これが重要。アニメーションは現代社会に別の回路を開いてくれるような存在です。この作品が、映画祭にとっても何かアップデートになる気がしている」とし、「アジア全体にとって重要な作品になるよう、一緒に旅をしたいと思っています。」と選考理由と本作への期待を述べました。
山田氏は、「横尾忠則さんに先を越されて悔しい思いをしていた」と、同じく寒山拾得をテーマにした企画「横尾忠則 寒山百得」展を意識している様子で、「この受賞をきっかけに、新作をごりごり進めていきたい」と意気込みを語りました。
本プログラムは、映画祭公式YouTubeチャンネルにて、後日収録映像の配信を行います。詳細は公式ホームページまたは各種SNSをご確認ください。
11月5日(日)、シアター会場にて「キッズ賞」の授賞式が行われました。キッズ賞は、マルジョレーヌ・ペレトン氏の「ねずみのひっこし|Pebble Hill」が受賞しました。
初年度から実施している「こども審査員」も10年目
キッズ賞は、本映画祭初年度の2014年から取り組んでいる本映画祭のプログラムの1つです。短編アニメーション7作品から「こども審査員」による審査・選考するもので、審査員は北海道在住の小学4〜6年生5名により結成され、事前にご家庭で作品を視聴した後、オンラインによる意見交換により受賞作品を決定しています。
授賞式では、ステージ上で各審査員がお気に入りの作品を紹介、「緊張したけど、もっと映画が好きになりました」など審査員を務めた感想などを話しました。
こども審査委員長を務めた村井結都(ゆいと)さんは、キッズ賞を発表し、「登場するキャラクターがとてもかわいくて、家族で力を合わせて困難を乗り越える様子がとても良かった。ハラハラするようなシーンもたくさんありましたが、最後はあたたかい気持ちになる終わり方で、たくさんの人に見てもらいたい作品だと思いました。」と評しました。
来場していたマルジョレーヌ氏は、今回の授賞について大変驚いた様子で「私の作品を選んでいただき光栄です」と授賞の喜びを語りました。
作家プロフィール
マルジョレーヌは、2009年から2012年にスイスのローザンヌにある芸術学校ERACOMでマルチメディア・デザインを勉強した後、インターンシップを通じてアニメーションを学んだ。彼女は現在、ナダスディフィルムでアニメーション映画の監督として働いている。
ストーリー
トガリネズミの小さな家族が小川のほとりに住んでいる。だが、そんなある日、激しい雨が降って村が押し流される。幸い、一家は最悪の事態を免れたものの、彼らの家は壊れてしまう。そこで小さな家族は、冬が来る前に引っ越そうと、新しい住まいを探し始める。
新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会では、2023年11月2日(木)〜6日(月)までの5日間に渡り新千歳空港シアターを中心に開催した「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」が無事閉幕しました。
10年目となる今年度は、コンペティション部門をはじめ、招待部門に豪華ゲストを招いた特別上映・トークプログラム、音楽ライブ用の音響機材を増設した爆音上映、北海道内の人気音楽フェスとコラボしたライブプログラムほか、無料トークプログラムなど全63プログラムが行われました。
コンペティションでは一次審査によって、短編部門には93の国と地域から2,157作品中58作品、長編部門では24の国と地域から44作品中5作品が選出され、
最終日となる6日(月)、長編・短編アニメーションのグランプリを含むコンペティション受賞13作品の発表と授賞式を新千歳空港ポルトムホールで行いました。
コンペティション短編部門
コンペティション短編部門グランプリは、ジョシュ・シャフナー氏の『In Dreams』が受賞しました。 国際審査員を務めたトメック・ポパクル氏は、作品について「観客の心を異なる惑星、仮想現実、小宇宙から大宇宙へと通過する旅へと導く」「真に異質で未知なるものと接触しようとする、常識を超越した作品」と評しました。 来場していた米国モンタナ州のミズーラ出身の映画作家でビジュアル・アーティストのジョシュ氏は、「素晴らしい賞をいただけて光栄です。実験的な作品で、鑑賞者がどう関わり繋がれるか不安に思っていました。時に人の夢の話は退屈ですよね。このような賞をいただけてとても安心しました。ありがとうございました」と受賞の喜びを述べました。
また、日本グランプリには、チャール・ハルマンドル氏の『Vision』が受賞。チャール氏は、トルコ・イスタンブール出身のアーティストであり、現在東京藝術大学 大学院博士課程に在籍しています。審査委員の金澤 韻 氏は、「世界はあらかじめそこにあるのではなく、知覚する者によってはじめて姿を現すということを改めて思わせました。多くの人に共有されうるフレッシュな視野を、洗練された表現で伝えてくれる作品」と評しました。
チャール氏は「日本グランプリに選んでもらい、大変嬉しく思います。私のような色々な国の出自を持つアニメーション作家を受け入れてくれた日本にも感謝しています」と受賞について述べました。
本映画祭の特徴の1つである、MV(ミュージックビデオ)をはじめとした、音と動きとのシンクロナイゼーション(同期)を楽しむ「ミュージックアニメーションコンペティション」では、今年10作品がノミネート。審査員にアニメーション監督の森本晃司氏を迎え、ベストミュージックアニメーションを決定しました。
上映・審査は、シアター音響に加え音楽ライブ用の音響機材を付加し迫力ある大音響で映画を鑑賞する「爆音上映」で行われ、森本氏は観客と共に鑑賞後の審査及び結果発表となりました。
ベストミュージックアニメーションは、ジェイク・オルソン氏「Given Again」が受賞しました。ジェイク氏には、賞金10万円と授賞メダルが贈られます。
ジェイク・オルソン|Jake OLESON(アメリカ)
映画監督でエレクトロニック・ミュージシャン。彼のものづくりへの情熱は、デザイナーである愛情深い両親の、創造性と楽しさには計り知れない力があるという考えのもとで培われた。現在は、映画と音楽を通して困難を乗り越える人間の精神力を称えることを中心に、創作活動を行っている。
森本氏「AIを使うことでこんな表現も出来るのか」
審査について森本氏は、「何を選ぼうかと思ったときに、気持ち良いのがいいなと思った」と、音楽とのシンクロ性や気持ちの良い世界観があるものを選びたいと考えていたと言い、「(事前に鑑賞した中で)3〜4作品で悩んでいたが、最終的には大きなスクリーンと爆音上映で観て決めたかった」と選考までの経緯について説明しました。
今回のベストミュージックアニメーションとなったジェイク氏の「Given Again」の選考結果について、上記の点に加え「AIという技術を使うことでこんな表現も出来るものかと、自分の作品にも使いたいと少し嫉妬もしました」と話し、この度の受賞を称えました。
また、最近アルゼンチンを訪れていたことに触れ、「どの国に行ってもアニメーションが本当に盛んです。AIをはじめ様々な技術が生まれています。これからも色んな作品に出会えることを楽しみにしています。」と授賞式を締め括りました。
11月2日(木)〜6日(月)まで開催中!世界初の空港内映画祭
11月10日(金) 全国ロードショーとなる「駒田蒸留所へようこそ」が、本映画祭のコンペティション長編部門入選作品として11月3日(金)北海道で初上映となりました。
本作品は、『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』 など「働くこと」をテーマに、日々奮闘するキャラクターを描いてきた、P.A.WORKSによる”お仕事シリーズ”の最新作です。
ストーリー
先代である父亡きあと、実家の「駒田蒸留所」を継いだ若き女性社長・駒田琉生(るい)は、経営難の蒸留所の立て直しとともに、バラバラになった家族と、災害の影響で製造できなくなった「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキー“KOMA”の復活を目指し日々奮闘していた-。そこに、職を転々としてきたニュースサイトの記者・高橋光太郎(こうたろう)が取材にやってくるが・・・。
クラフトウイスキーを生み出す情熱に感激。私たちも “クラフトアニメーション” を作り続けたい
北海道初上映を記念して、株式会社ピーエーワークスより堀川憲司氏(代表取締役、プロデューサー)、相馬紹二氏(取締役、プロデューサー)による舞台挨拶と、メイキングトークが行われました。
今回の「駒田蒸留所へようこそ」を公開するにあたって必ず聞かれるのは「なぜウイスキーを題材にしたのか」という質問だそうです。それについて「今回の監督である吉原 正行がオリジナルの映画をつくる上で何を描きたかったのかと聞いて最初に上がったのが “人を育てるということ”」と、吉原監督自身が20年以上に渡りアニメーターを育てる仕事をしてきたことを説明。その題材として選んだのがウイスキーの世界観だったと言います。
仕込みから熟成まで最低でも3年以上、さらに言えば10年、20年長いことかけてようやく完成するウィスキーに、「人を育てるというところと同じで。人を育てていく成長していく様子と、ウイスキーが熟成して世に出ていく、ここを作品として被らせて表現したかった」ことがウイスキーを題材にした理由とのこと。
さらに本作では、さまざまな蒸留所に取材に伺った中、ウイスキーづくりに携わる多くの人たちの情熱、熱い思いのものづくりに感激したと言い、「僕らのアニメーションづくりと共通するところがありました」と、ちょうどピーエーワークスがどんなアニメーションづくりをこれからもしていこうかと考える中で、丁寧に手作業で作られるクラフトウイスキーにように「”クラフトアニメーション”のようなものを作り続けたらよい、彼らのように作ることそのものに物語があればいいんじゃないか」と思い至ったと言います。
さまざまな立場から見ることでより楽しめる作品に
メイキングトークでは、アニメーションスタジオの経営や人材育成の部分についてより深いお話に。吉原監督自身がスタジオを設立して若手を育成してきた23年間、その育成とものづくりの現場が今回汎用性のある形で作品に込められたと言います。相馬紹二氏は、「吉原作品が動くということはスタジオ内でも良い意味で緊張感」が生まれ、アニメーターにとっては「何年かに一度訪れる監督作品で、教わってきたことがどれくらい自分の身になっているか」、吉原監督にとっては「教えてきたことをここで見せてもらうという機会」になっていると言います。
「20年かけて吉原が伝えてきたことをアニメーターたちが受け取って、的確にフィードバックできるからこそ作れる」作品になっているという、その人材育成への並々ならぬ力の注ぎ方とアニメーション制作現場で切磋琢磨しているお話は、作中のウイスキーづくりの現場、さらにはニュースサイトの記者が成長していく様と重なるものでした。
最後に、堀川 憲司氏より、この作品はウイスキーづくりをする人たちはもちろん「誰に見ていただいても楽しんでいただけるものになった」と振り返り、「幅広い年齢層の人たちが見て、感情移入するキャラクターの立場になって見ることで感じ取るテーマが違う作品になっていると思う。たくさんの方に見ていただける作品になればいいなと思っています」と締め括りました。
映画『駒田蒸留所へようこそ』は、11月10日から全国ロードショーとなる他、公開記念の特典もあるそうです。詳しくは公式サイトをご覧ください。
11月2日(木)〜6日(月)まで開催中!世界初の空港内映画祭「第10回 新千歳空港国際アニメーション映画祭」
コマーシャルフィルム、ミュージックビデオ、空間映像など、企業等のクライアントから依頼を受けて制作される「コミッションワーク」は、いまやアニメーションの主要な表現の場のひとつです。
開幕初日のトークプログラムは「コミッションワークにおけるアニメーションの導入と実践」として、映像というフィールドでジャンルを問わず新しい驚きを生み出すプロダクション「P.I.C.S.」から池田一真氏と稲葉秀樹氏の2名のディレクターをゲストにお迎えし、コミッションワークとアニメーションの関係を紐解きました。
池田 一真(映像ディレクター)
企画 / 演出。アイデアやユーモアに溢れた映像表現を得意とし、手法にとらわれない柔軟なディレクションで、TVCMから企業ブランディング映像、MV、アニメーションコンテンツやアトラクション用の空間映像まで、多岐に渡る媒体やジャンルを手がける。主なアニメーション領域での活動に、サンライズ×アソビシステムによるオリジナルプロジェクト『Artiswitch』(全6話)の監督や、テレビ朝日「クレヨンしんちゃん」オープニング映像のディレクションなど。
稲葉 秀樹(アニメーションアーティスト / 映像ディレクター)
CG映像製作会社を経て映像クリエーターとして活動。
2017年 Red Hot Chili Peppers「Getaway Tour Viz」に映像作家として参加。海外のアーティストとコラボレーションした作品は、Pictoplasma、Reading & Leeds Festivals、This is Colossal、The Vergeなどの映画祭やメディアで上映、掲載されている。”SlowlyRising”にて第20回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。独自の手法を用いた、繊細で緻密なアニメーションのスタイルを得意とし、CM、MV、OOHなど幅広く手掛けている。
冒頭では、お二人の直近のコミッションワークやお二人のターニングポイントとなる代表作についてのお話からスタートしました。池田さんは、livetune adding 中島 愛「Transfer」、そしてサンライズ×アソビシステムが手掛けるオリジナルアニメーション『Artiswitch(アーティスウィッチ)』を、稲葉さんからは、圧倒的な密度のアニメーションを取り入れたミュージックビデオ「Slowry Rising」と、その作品の延長的なコミッションワークとして作られた2019年の資生堂「Holiday Campaign」の動画が紹介されました。
⇒ BEATSOFREEN「Slowly Rising」|WORKS|P.I.C.S.
与えられた条件の中でどうクリエイティビティを発揮するか、仕事に対する姿勢について
クライアントからの要望や目的といった枠組みがあるコミッションワークと、自分のクリエイティビティのバランスに対して、お二人共に、”そもそもの企画を一番大事に、そこからどう表現していけるか”をまず考えているとのこと。
池田さんは、「求められる方がテンションが上がるというか、何を期待されているんだろうと考えて応えられるように」したいとコミッションワークへのモチベーションについて語りつつ、自分が作りたいものよりも各セクションのメンバーたちと面白いものを作っていく方が好きという制作スタイルやその姿勢について、また稲葉さんはコミッションワークの中でも「コンテとコンテの間の部分が埋まっていない、そこが結構自由なポイントだと感じている。自分がこの案件にどんな遊びを入れられるだろうか」と楽しみながら取り組んでいると話しました。
プロダクションに所属するという選択
また、お二人はフリーランスながら「P.I.C.S.」というプロダクションに所属しています。さまざまな働き方がある中、マネジメントを受けながら活動することについて聞きました。
マネジメント契約ではあるものの、お二人ともフリーランスであり自分の看板で仕事をしている意識であるようです。池田さんはマネジメント契約のメリットに「スケジュール管理や予算等の交渉などがすごい苦手」とマネージャーに依頼することで制作にかける時間を確保している「逆にそうじゃないと今は終わらない状態」と言います。
また、稲葉さんは、自身の作品や制作スタイルに発注が来るようになっている一方で、それ以外の仕事がなかなか出来なくなることについて触れ、「自分のスタイル(の作品制作)もやりつつ、全然違う案件も受けられる」という仕事の選択肢を広げることができるメリットについて話しました。
司会の田中 大裕氏は、マネジメントを受けることが制約になると考える人がいるかもしれないが、むしろそれによって自由を確保出来る可能性がるというところが興味深いところだと締め括りました。
P.I.C.S.の映像作家がVJとして参戦!OTO TO TABI × NEW CHITOSE 2023 エアポート音楽会
11月5日(日)17:45からは、OTO TO TABI × NEW CHITOSE 2023 エアポート音楽会を開催。シンガーソングライター・澤部渡 (スカート) 氏による弾き語りライブと、そのVJにP.I.C.S. management 所属の渡部 康成 氏をお招きします。
新千歳空港国際アニメーション映画祭では、これまでgroup_inou、Homecomings、トクマルシューゴらのライブを行い、音楽と音に注目する様々なプログラムをお届けしてきました。
今年映画祭10回目を記念して、2011年から札幌市内でインディペンデントの音楽イベントを開催する「OTO TO TABI」とコラボレーション!
映画館の大スクリーンに包まれた特別な音楽会をお楽しみください。